【禅】アルマゲドン2008【虚無】
どうもマッハ人生です。
前回はヒット作便乗作品B級映画のお手本ともいえる「アルマゲドン2007」のレビューをしました。詳細は省きますがとてもいい映画でしたね。観ましたよね?
今回は少し趣向を変えて、方向性の違う映画をレビューしていこうと思います。
それではどうぞ。
アルマゲドン2008です。
(c)Red Arrow International
原題:Futureshock: Comet
公開:2007年
監督:キース・ボーク
脚本:マット・ハーヴェイ、ドミニク・モーガン
あらすじ
2008年8月、巨大隕石の墜落でアイルランドが壊滅。しかも、新たな巨大隕石が地球に迫っていることが発覚する。パニック状態となった世界で、残された最後の方法“民族大移動”を遂行しようとする人々の姿を描く。
この映画、本当に中身がない。
冒頭、わりと急ぎ足で今地球に危機が迫っていることが告げられる。このあたり、セリフも映像もテンポよく進んでいて、よくあるB級映画のようにダラダラと説明だけが進むなんてこともない。ひょっとして隠れた名作なのでは?とさえ思えてしまう。
最初の隕石が地球に衝突するシーンなんかの演出も「平和な日常がある日突然崩壊した」ってのがあざとく表現されていて、
(c)Red Arrow International
そう、あざとく。
(c)Red Arrow International
あぁ^ーあざといんじゃー
(c)Red Arrow International
ここで突然の資料映像は笑う。
よくある手法といえばそれまでだけれども、こういう「ちゃんとした」演出を入れられるってだけでもだいぶ偉いです。映像での演出であったり、セリフ回しであったり、ちゃんと考えて構成されてるシーンが要所要所あります。ご飯のあとちゃんと歯を磨けるのと同じくらい偉いです。
ご存じないかもしれませんが、俳優が立ってしゃべってるのを撮った映像をそのまま垂れ流しといて映画だって言い張る作品がゴロゴロあるんですよ。それを考えたら本作はちゃんと映画やってました。
しかし「再び彗星が衝突する可能性がある」と判明するまでにだいぶ尺を使っていて、全体的に緊張感がない。あれ、これ大丈夫なのかな?
そしてやっと地球に向かっている彗星が発見され、主人公たちは地球を救うために作戦を考えます。主人公の上司は、水爆を使って彗星の軌道を反らす作戦を提案します。よくあるやつですね。物理は詳しくないんですが、理に適ってるような気がします。ところが主人公はなにかご不満な様子。どうしちゃったのかな?
「何もせずにこのまま衝突を受け入れよう」
「何もしない」じゃあないんですよ。コレ映画ですよ?
主人公によると、彗星はもろすぎて水爆を使うと粉々になってしまいいくつもの破片が地球全土にふりそそいで、かえって被害を甚大にする可能性があると。そうなんだ。でもね、これ映画なんだ。何かしてくれないと盛り上がりも何もないんですよ。紆余曲折遭った末、結局主人公が考案した「アメリカなんて捨ててみんなで逃げよう」作戦が選ばれました。
そう、この映画何もしないんです。
地球の危機に、何もしないんです。
それがこの映画の本質です。
主人公も迫真の演技で色々力説してますが、結局のところなにもしません。
物語の後半で、いつの間にか付き合ってた主人公とヒロインが感動的に離れ離れになったり、彗星の衝突を最後まで見届けるために将軍や主人公たちが作戦本部に残ると言い始めたりするんですが、見てるこっちとしてはどのキャラクターにもなんの思い入れもないんですよ。だってなにもしてないから。
俳優さんはとても演技頑張っています。それは確かです。ただ、キャラクターの人間性や関係性について語られることも描写されることもないままラストまできてしまったので、状況を説明して用意されたセリフを発言するだけの人の集まりにしか見えないんです。
これなんだろうなって思いながら観てたんですけれども、インタビューシーンを抜いたドキュメンタリーみたいな感じというか、まったく面白くなくしたプロジェクトXっていうのがわりとしっくりくるような気がします。
シナリオの内容について書こうにも本当に書くことがないのでちゃっちゃと最後の方に行きますね。彗星衝突の間際、最後の最後に脱出しようとしていた主人公たちが脱出しようとするも、乗る予定だったヘリと通信ができず、避難便が出る時間までに空港に着けないかもしれない事態に!
あれ、君らの言ってた最後って、このあたりのギリギリラインのことだったんですね。
えらく感動的にサヨナラしてましたけども、ちゃっかり逃げる気でいたんですね。
車めっちゃ飛ばしたり、乗り捨ててめっちゃ走ったり、本気で逃げる気なんですね。
そして空港に着くも、そこには逃げ遅れ最終便にも乗れないことが分かり、半暴徒と化した一般市民たちが。そのうちの一人が「最終便に乗せろ」と拳銃を発砲する。
人々が混乱する中、主人公たちは急いで横入りして、ちゃっかり最終便に乗り込む……。
クズだ!!
さっき人間性が見えないって書いたけどここで判明した!!
この主人公クズだ!!
そして迎える、衝撃のラスト……。
(c)Red Arrow International
とくに何もないことがよくわかりますね。
とくに何も起こらずにアメリカは滅ぶけど、がんばって復興していこうな。
以上がアルマゲドン2008です。
総評としては「淀みなく流れる水道水をじっと見るようなアンビエント映像」って
ところです。
映画って、面白くても面白くなくても見終わった後なんだかんだ疲れるじゃないですか。多幸感でなのか怒りでなのかは別として。この映画、それがなかったんですよ。本当に98分がただただ流れていきました。
B級映画だと大抵、映像や設定、俳優の演技なんかにネタ要素とかツッコミどころとかあるんですけれども、それすらもない。何も起こらないにもかかわらず、98分苦痛を感じずに見ることができる程度にテンポもよかった。映像として非常によくできている。だからこそ98分がただただ過ぎていく「無」がそこにある。
ただ先にも述べたように、物語の中盤ではいがみ合っていた二人がまた冒頭のように軽快なジョークを言うシーンや、水爆を使う作戦を是としない主人公が力説するシーンなど、いいなと思えるシーンは結構あった。
ただ肝心のシナリオがこんなじゃ、付け合わせだけが美味しいヘルシーすぎる豆腐ハンバーグみないなもんだよ。おいらは映画が見たかったの。
劇中、東京大学の研究員が出てきたりセリフの中にWWⅡ中の硫黄島での戦闘につい
て触れていたり所々日本を意識している様子なので、これはもしかしたら「禅」な
のかもしれない。「空であって空でない」のかもしれない。
この映画を理解できたとき、人は「禅」の神髄に触れることができるのかもしれません。生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えが知りたい方にオススメです(SF要素)。
おいら?おいらは今日の晩御飯について考えるのに忙しいのでご免です。